MY LIFE 1

2002年8月、中学2年生の夏 僕は音楽の道へと足を踏み入れた。


夏休み、暑い日が続く中、僕達は黙々とグラウンドを走り続けた。

「ラスト3本!!」

部長の声にも熱がこもった。

明後日に陸上の大会に向けて、部員の士気も高まっていた。

グラウンドを斜めに端から端まで走りぬける――

そのとき

「いっ!!」ドサッ

僕は足をくじいてその場に倒れこんだ。

「ナガシマ!大丈夫か!?」

グラウンドの真中で腕組みをしていたハゲタカ顧問がかけよってきた。

「ぃつつつ」

ジャージのすそを上げてみると、足は赤くはれ上がっていた。

「お前は今日はもうあがれ。病院にいってこい」



その次の日、僕は病院の近くの公園で肩をおとしていた。

「この足じゃ大会は無理だね、2週間くらいあんせいにしてなさい」

あのやぶ医者病院の先生に言われたのだ。

片手に持ったコーラを一気に飲み干して むせこんだ。

ため息をついてうなだれるしかなかった


家に帰った僕はPCをつけた。

PCは僕の趣味のひとつだ

最近は『ふみこみゅ○○○』という友達募集掲示板をよく見ている。

今日もいつもと同じようにサイトをウロウロしていると

ふと

バンドメンバー募集掲示板

という文字がやたら目に入った。

いつもならたいして気にならないのだが、

今日はなぜか気になった。

ふと、去年の音楽祭で先輩がバンドのライブをやっていたのを思い出した。

CDとは比べ物にならない

ありのままの音の重みがあって

体の芯に響く音。ものすごい迫力に鳥肌が立ったのを覚えている。

カチッ

クリックした。

ズラっと並んだ投稿の中に

僕と同じ静岡県在住で、さらに同じ学年の人の投稿を見つけた。

☆ショウ☆
                                                   
自分は静岡県東部に住んでいます。
まだ楽器などは全くやったことはないのですが
これから仲間を作って一緒に練習していきたいと思っています。
少しでも興味がある方はメール下さい!!

僕は、足を怪我して部活もできないので、興味本位でとりあえずメールを送ってみた。

ショウさんへ

はじめまして。ナガシマユウスケって言います。
僕は静岡県東部に住んでいます。楽器はやったことないのですが、音楽にすごく興味
があります! よかったらメールください!

今思えば この何気ない行動が

今の僕にとってなくてはならない音楽を始めるきっかけとなったのだ。 



その三日後―

僕は三島駅で、青いGパンに黒いタンクトップを着ている人を探していた。

その時ふいに後ろから

「あの」

と声を掛けられた。ふリ向いた僕の目に映ったのは

いかつい短髪、細くて鋭い目、おまけに長身といった、いかにも怖い人だった。

僕は男性のあまりの迫力にオドオドしていた。

すると男性は

「ユウスケ?」

と口にしたのだ。僕はハッ!とした

いかつい短髪に、細くて鋭い目、長身でいて・・・黒いタンクトップにGパンだ!!!

「ショウ!?」

驚いたような声をあげた僕をみてショウは笑った。

「ハハハ、そんな驚くなよ!んで、初めまして、だな」

ショウの細く鋭い目は、笑みによって多少柔らかくやさしい目になった。

ショウは緊張している僕を見て

「じゃ、さっそくだけど店いこっか?」

と見た目に合わない、やさしい感じで言った。


三日前僕がショウにメールを送った後、僕とショウはメールをやりとりするようになった。

そして、とりあえず二人で『ゆず』のようなユニットの真似事でもしてみよう、という話になったのだ。

そのためにはギターがいる、ということで、今日、ショウと会ってギターを買いに行くことになっていたのだ。


―あまり三島の地形に詳しくない僕は

ショウの後ろを、辺りをキョロキョロ見回しながらついていった。

いかにも中道という道を歩くこと約15分、

小さな『オレンジ村』という看板の楽器ショップ?らしい所にたどり着いた。

すみや のような大きな店を想像していた僕は少々おどろいて

「ショウ、ここ?」

と聞いた。ショウは軽くこっちを見てうなずくと、さっさと店の中に入ってしまった。

「ちょっ、まってよっ」

僕も急いで後に続いた。

店の中は、外から見た通り、おせじにも広いとは言えなかった。

しかし、たくさんギターやベースなどが置いてあり、内心わくわくした。

でも困ったことに、ギター初心者の僕とショウ、

ギターを目の前にしてどうしたらいいかわからず

狭い店内をウロウロウロウロすること約20分。

流石にしびれをきらしたのか、レジの奥から 金髪でぽっちゃりした優しそうなおじさんお兄さんが出てきた。

「えっと〜今日は何を探してるのかな?」

僕とショウは顔を見合わせた。

「えっとぉ〜・・・」

僕は口篭もった。

「初心者用のフォークギターを買いに・・・」

ショウがすんなり言った。ショウがすこし、光り輝いて見えた

フォークギターってなんだ!?ギターはギターじゃないのか!?

と僕は思っていたが、恥ずかしいので黙って見ていた。

すると、金髪のお兄さんはズラッと並んだギターの中から

黒い縁取りをした、淡い緑色の厚いギターを持ってきた。

そのギターの真中には丸い穴が空いていて、中は空洞のようだ。

どうやらこれが『フォークギター』らしい

「それならこれなんかどうだい?初めてやるならこんなもんでいいだろ」

お兄さんが持ってきたギターを立て掛けてあったスタンドには

12000円とかいた値札がついていた。

「12000円!?」

ギターはもっと高価な物だと思っていた僕は驚いた。

「どうだい?」

お兄さんは営業スマイルにっこりしながら僕に問い掛けた。

「はい!これください!」

値段に満足した僕は即答した。

そしてそのギターを、自分で貯めたお小遣いの貯金で買った。

その日初めて自分のギターを手にした僕は、胸に大きな期待を抱いたのだった―――

初めて自分のギターを手にし

ウキウキな気分で家に帰った僕は、

早速ギターをかかえて・・・

ギターをかかえて・・・

かかえて・・・どうすればいいんだ!?

全く何をすればいいか分からない。

ギターを抱えてボーっとしていてもしょうがない、と思った僕は

『ギター買ったけど何すればいいの!?』

とショウにメールで助けを求めた。すると

『練習!』

と一言返ってきた。いやわかってるよっ!

『何をどう練習すればいいの!?』

『知らん!』

えええええ!?なんだこの適当な対応・・・

なんと!!

この後にもうメールはなく、

ショウと僕との連絡は一切とだえた。

そして

大きな期待を抱いたこのギターも

ただの部屋の飾り物になってしまった


MY LIFE 1 完   7月12日

  
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